Balten Seijin の今日のひとこと

いくつかの霊想書の中からその日のお気に入りを載せます

多事動揺のうちに大工事が進む


 信仰の生涯は外面の無事平隠なるに対して、内部は多事動揺の生涯である。神を信じ、彼の黙示に接し、 彼の約束に与り、しかもその約束の速かに実行せられざるより、ある時は彼をうたがい、時にあるいは全く彼と離絶せんとする。ここに忍耐の必要が起り、信じがたきを信じ、望みがたきを望む。時には聴かれざる祈疇に信仰の根底を挫(くじ)かれ、 時には懐疑の雲に希望の空を蔽(おお)わる。ひとり泣き、ひとり叫び、ひとり祈る。かくしてわれは数年、または数十年を経過せぎるをえず。されども見よ、時いたれば天開け、わが眼はそこ にわが故郷を見るに至る。神はわが父となりて、われは彼の子と称せらる。世は外に拡張しつつありし間に、われは内に穿(うが)ちつつあったのである。われはついに生命 (いのち)の水に掘りあてた。流れて永生(かぎりなきいのち)に至るの泉は、 わがうちよりほとばしるに至ったのである。

 

(一日一生 内村鑑三