詩人、地主にいうていわく「土地はなんじのものなり、されども風景はわがものなり」と。神の天然を楽しむに、山林田野をわがものとするの要なきなり。詩人、政治家にいうていわく「政権はなんじにあり、教権はわれに存す」と。 人の心を支配するに軍隊、警察、法律、威力に拠(よ)るの要なきなり。 詩人、 宗教家にいうていわく 「寺院と教会とはなんじに属す、されども霊魂はわれに帰す」と。人に神の愛を示し、 救拯(すくい)の恩恵(めぐみ)を伝え、聖霊の歓喜(よろこび)を供するに、僧侶、神官、監督、牧師、伝道師たるの要なきなり。
(一日一生 内村鑑三)